被相続人の負債に関するQ&A

文責:所長 弁護士 石井浩一

最終更新日:2022年03月23日

被相続人の負債に関するQ&A

Q債権者から連絡が来ているのですが?

A

1 被相続人の債務

 被相続人が債務を有していた場合、これは原則として相続の対象となります。

 つまり、相続人が法定相続割合に応じて返済する義務を負います。

 被相続人が貸金業者等に対して債務を負っていた場合、相続人に対して借金を返済するように連絡が入ることがあります。

 なお、貸金業者が被相続人死亡の事実を知らないこともあり、そのような場合には被相続人宛てに支払いの催促の書面が送られてくることもあります。

 相続放棄を検討しているときに債権者から連絡が来た場合、焦って支払いに応じてしまわないことが大切です。

 被相続人の現金、預貯金等から支払ってしまうと、法定単純承認事由に該当する行為となり、相続放棄が認められなくなる可能性もあります。

 債権者に対しては、相続放棄を検討中であることだけを伝えるのが得策です。

 完全に無視をすると、裁判等を起こされる可能性がありますが、ご自身で債権者に連絡するのが怖いということもあるかと思います。

 そのような場合は、相続放棄の代理人弁護士を通じて、貸金業者等へ一報してもらうというのも効果的です。

 

2 被相続人の住宅の賃貸人

 被相続人がアパートやマンションなどを借りていた場合、大家さん(賃貸人)も、債権者となります。

 賃貸人に対する債務は、主に未払の家賃と、(相続人が継続して住まない場合)原状回復があります。

 以下、継続して住まない場合を前提として考えます。

 相続放棄との関係で対応すべき問題は主に2点です。

⑴ 賃貸借契約の処理

 相続人と賃貸人との間で合意解除をした場合、法定単純承認事由に該当する行為である賃借権の処分に該当しかねないので、避けます。

 家賃の未払いを理由に、賃貸人から法定解除をしてもらうことが得策です。

⑵ 原状回復、特に被相続人の残置物の処分

 法律上、相続放棄をする場合、原状回復については何もする必要はありません。

 賃貸人が相続財産管理人選任申立を行い、残置物処分等を含め、賃貸物件の原状回復と明渡し処理行うことになります。

 もっとも、賃貸人が必ずしも相続に関する法律に詳しいとは限らず、相続放棄をする旨を伝えても原状回復を求めてくることがあります。

 そのような場合、財産的価値のない物は相続財産ではないと解釈し、処分してもよいと考える実務傾向があることから、再販価値のない残置物については処分するという対応をすることがあります。

 実際に処分し、後で問題になるケースは、実務上は非常に少ないです。

 もっとも、残置物の処分は条文に記載がなく、裁判所等によっても明確に認められているわけではないことに注意が必要です。

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