遺言がある場合の相続放棄

文責:所長 弁護士 石井浩一

最終更新日:2021年08月16日

1 遺言と相続放棄

 遺言は、被相続人の意思によって、誰にどの財産を相続させるかを指定することができます。

 被相続人死亡の瞬間から、遺言に書かれている通りに、財産権が移転します。

 もっとも、被相続人が遺言を遺していたとしても、相続放棄をすることはできます。

 たとえ遺言が存在していたとしても、被相続人や他の相続人と疎遠でありかかわりを持ちたくない場合や、被相続人と仲が悪く報復的な遺言を作成されてしまっている場合、相続放棄をすることは有用です。

 手続きは遺言がない場合の相続放棄と全く同じです。

 一点注意すべき点は、遺言の通りに財産権を移転させる手続き(預貯金の名義変更や不動産相続登記)は行わないことです。

 

2 相続放棄の期限

 遺言がある場合の、相続放棄の期限の考え方は、おおまかに2つのパターンに分かれます。

 まず、遺言の存在よりも先に被相続人死亡を知った場合です。

 この場合は、通常であれば、被相続人死亡を知った日から3か月以内に相続放棄を行うことになります。

 被相続人死亡を知ったのち、遺言の存在が判明し、その内容を読んではじめて債務が存在していることを知った場合は、遺言の内容を読んだ日から3か月以内であれば、相続放棄が認められることもあります。

 

 次に、遺言に関する連絡によって被相続人死亡を知った場合です。

 具体的には、次のようなパターンがあります。

 遺言が自筆証書遺言であった場合には、裁判所からの検認期日の通知書が届いて知ることがあります。

 遺言が公正証書遺言であった場合には、遺言執行者等からの連絡によって、被相続人死亡を知るということもあります。

 被相続人や他の相続人と疎遠であった場合、遺言に関する連絡を受けてはじめて被相続人死亡の事実及び自身が相続人であることを知るというのも珍しくありません。

 そのため、相続放棄の期限は、連絡を受けた日から3か月以内になります。

 相続放棄の手続きをする日が、被相続人死亡から3か月以上経過してしまっている場合は、その事情を説明する資料として、遺言の検認期日の通知書や、遺言執行者からの通知書面などの写しを用います。

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