相続放棄のデメリット

文責:所長 弁護士 石井浩一

最終更新日:2024年07月12日

1 プラスの財産も放棄することになる

 相続放棄は相続人としての立場を放棄することになるので、負債を引き継がなくてよいというだけでなく、もしプラスの財産があった場合でもそれを引き継ぐことはできなくなります。

 経済的な損得で相続放棄をするかどうか決めようと考えておられる方は、資産と負債のどちらが多いのかを見極めることが大事ということになります。

2 次順位の相続人に相続権が移る

 相続放棄をするとその人は最初から相続人ではなかったものとして扱われることになりますので、次順位の相続人がいる場合はその人が相続人になります。

 例えば、亡くなった方の子供が全員相続放棄した場合、亡くなった方の親やきょうだいが相続人になり得るということになります。

 これらの方々と親戚付き合いがあり、関係も円満だという場合は特に問題ないと思いますが、疎遠になっている、あるいは関係が悪いという場合には相続放棄することでこれらの人を相続の問題に巻き込んでしまうことになるため、場合によっては事前に対応方法を考えておいた方がよいこともあるかもしれません。

3 相続放棄は原則として撤回できない

 相続放棄は、原則として撤回することができません。

 例えば、相続放棄をした後になってプラスの財産が見つかったとしても、撤回はできないということになります。

 相続放棄を行えるのは、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内というタイトなスケジュールではあるのですが、こうしたことがないよう慎重に行うかどうかの判断をする必要があります。

4 死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が使えない

 相続放棄をしていたとしても、死亡保険金や死亡退職金を受け取ることが可能です。

 しかし、相続税の非課税枠は相続人でないと適用されないため、相続放棄によって死亡保険金や死亡退職金に課される相続税が増えてしまうということがあり得ます。

 圧倒的に負債が多いという場合であれば相続放棄するほかないということになるでしょうが、資産と負債の差がさほど大きくないという時は、この点も気にした方がよいかもしれません。

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