相続放棄が受理されないケース

文責:所長 弁護士 石井浩一

最終更新日:2023年07月20日

1 相続放棄が認められない場合

 相続放棄は、所定の書類を家庭裁判所に提出した後、家庭裁判所が審査を行い、相続放棄を認めてもよいと判断された際に、「受理」されることで認められます。

 相続放棄が完了すると、相続放棄申述受理通知書という書類が家庭裁判所から発行されます。

 相続放棄が受理されるまでには、家庭裁判所により、必要な書類等が足りているかという形式的な審査と、法律上相続放棄を認めてよいかという実質的な審査が行われます。

 以下、それぞれについて説明します。

2 相続放棄に必要な書類

 相続放棄は、最低限、相続放棄申述書という書類と、付属資料である戸籍謄本類が必要となります。

 戸籍謄本類は、親子相続の場合、被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本と、相続人の現在の戸籍謄本が必要です。

 子の相続放棄を親(直系尊属)が行う場合、被相続人である子の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になります。

 さらに、兄弟姉妹の相続放棄を行う場合、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本に加え、直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本も必要になります。

 また、申述先の家庭裁判所が管轄の裁判所であることを示すための書類として、被相続人の除住民票または戸籍の附票が必要となります。

 そのほか、被相続人死亡から長期間経過した後、債権者からの通知書類などによって被相続人の死亡の事実(相続の開始)を知った場合には、相続の開始を知った日を示す書類として、債権者からの通知書の写しを付けることもあります。

 これらの書類が足りていない場合、相続放棄は受理されません。

3 法律上相続放棄が認められない場合

 まず、相続放棄は相続の開始を知った日から3か月以内に行わなければならないことになっていますので、相続の開始を知った日から3か月以上経過している場合には受理されません。

 次に、法定単純承認事由があると判断された場合、相続放棄は受理されません。

 具体的には、相続財産の処分、すなわち廃棄や売却、預貯金の費消などがあった場合には、相続放棄は受理されません。

 また、申述人が真意で相続放棄の申述を行っている場合には問題になりませんが、強要されて相続放棄の申述をしている、または他の者がなりすまして相続放棄の申述をしていると家庭裁判所が判断した場合、相続放棄は受理されないこともあります。

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