相続放棄の効果

文責:所長 弁護士 石井浩一

最終更新日:2024年10月20日

1 法律上の相続放棄

 相続放棄の効果を説明する前提として、相続放棄には法律上の相続放棄といわれるものと、事実上の相続放棄といわれるものがあります。

 法律上の相続放棄は、裁判所に対して相続放棄申述書という書類を提出し、裁判所によって受理されることで成立する手続きです。

 事実上の相続放棄は、遺産分割の場面において、一切遺産を取得しない旨の意思表示をすることです。

 今回は、主に法律上の相続放棄の効果について説明します。

2 相続放棄の効果

 相続放棄の効果は、はじめから被相続人の相続人ではなかったことになる、というものです。

 相続放棄の最も大きい効果としては、相続財産を一切取得することができなくなり、また相続債務を一切負うことがなくなるというものが挙げられます。

 実務上は、相続債務を一切負わなくて済むという点が非常に重要です。

 なお、事実上の相続放棄の場合、特別な手続きをしないと、相続債務は負うことになります。

 また、相続人ではなくなることにより、相続関係から離脱することができます。

 そのため、他の相続人は、相続放棄をした人のことは全く考慮することなく、遺産分割協議を進めることができます(むしろ、相続放棄をした人は、遺産分割協議に関与することはできません)。

 相続人との関係が険悪である場合や、トラブルメーカーの相続人がいる場合などにおいては、相続放棄をすることで、遺産分割に一切関わらないで済みます。

3 法定単純承認事由

 補足的なことですが、上述の相続放棄の効果を打ち消してしまう行為がありますので、注意が必要です。

 法定単純承認事由と呼ばれる行為がこれにあたります。

 実務上重要な行為として、相続財産の処分があります。

 たとえば相続財産の中で、被相続人の預金を費消したり、遺産に属する財産を売却したり、被相続人の残置物を廃棄したりすることは、相続財産の処分にあたる可能性があります。

 法定単純承認事由に該当する行為をしてしまうと、相続放棄をした後であっても、相続放棄の効果が認められなくなる可能性があります。

 そのため、相続財産へのかかわり方には慎重になる必要があります。

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